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五嶋みどりさんの言葉

Japan in the First Person~My Life, My Nation~(日本語字幕つき) からヴァイオリニスト五嶋みどりさんのインタビューの一部をご紹介します。この番組は、NHKの英語国際放送(NHKワールド)で放送されたシリーズ(全5回)です。五嶋みどりさんは、この2回目に登場しました。多少、字幕の訳と変えたところもあります。

出演は一回目:マサチューセッツ工科大学 利根川進教授、三回目: 前富士ゼロックス相談役最高顧問 小林陽太郎氏、4回目:工業デザイナー 奥山清行氏、五回目:高円宮久子妃殿下 という多岐に渡ったそうそうたるメンバーです。


Q:幸せなとき、悲しいときで紡ぎ出す音は変わってきてしまうでしょう。その点はどうコントロールされているんですか

演奏する音に影響するほどの時は極端な状況だと思いますが、他の人の演奏を聴いていても確かにそういうことはあります。ただ音楽を演奏するというのは、人生を歩むようなものだと思うし、人の気持ちはハッピーか悲しいかで簡単にすっぱり二分できるものでもなく、色々な感情が複雑に入り組む中で生きているものだと思います。それは音楽を演奏していても同じことなのです。


Q:追求している理想の音とはどんなものですか

私が目指している理想は音というより音色です。音色は正直です。私が目指している音色とは私自身がなろうとしている姿そのものなんです。誠実さと音楽表現や芸術表現の間のバランス、組み合わせ、仕組み、相互作用といったものがものすごく重要なんです。私にとっては音楽というものは音を鳴らすことではなく、今ある姿そのものなんです。

Q:演奏、その為の練習だけでも大変なのに、教えたり、ボランティアの仕事もされていて、どうやって時間の管理をされているのですか。


時間が私を見つけてくれるのだと思います。どれにも情熱を持っていますし、私がやっているあらゆることが私の刺激になっているのです。やりすぎだとか体のことを心配してくださる人もいますが、一つでも欠けたら私の人生はバランスを失ってしまい、一つを取り除いて出来た時間は、むしろより多くの問題を生じさせると思います。


カンボジアやベトナムでのボランティア活動(ミュージック・シェアリング)に触れて、、

様々な考えや見方に触れることでこちらの心も少しずつ開かれていくのです。私達は色々な貧困の現実にいきなり触れました。実際には経済的な貧困だけではなくいろいろなタイプの貧困があるのですね。無知が原因の場合や愚直さが原因の場合もあるし、悲劇的なケースもあります。

この経験を通して分かったのは、人の考えや思いというものは、否応なしに自分本位、自分中心のものになることは避けようもないですが、でもそのことが分かり始めれば、結果として謙虚にもなれますし、そして謙虚になると、もっと努力しよう、成長し続けよう、さらに学び続けようという気になります。

そして勿論、学べば学ぶほど自分が実は何も知らないこと、身につけることの出来る知識が膨大なものであることに気づかされます。実際、知識がどんどん増えていくにつれ、「前進し続けることの出来る自分は本当に幸運だ」と感じるようになるのです。


Q:音楽家を目指す若者に対して伝えたいことは?

皆、生まれ育った環境が違うので、「音楽家になるにはこれが必要です」と断言することは出来ません。ただ私にとって音楽家であり続けるために重要なことは三つあります。それは誠実さ、健康、そして品格です。

短期的にはずる賢さ、要領の良さ、世渡り上手のようなものが力を持つように見えることが、世間には往々にしてありますが、長い時間の枠の中で見ると、結局、みどりさんの言われた三つが、どの職業、どの人生にも一番重要なことのような気がします。今の大不況もそんなことを教えてくれているような、、、

by bs2005 | 2009-06-25 00:29 | 忙中閑の果実  

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