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ある介護戦士の死

最近、前程聞かれなくなった言葉に「企業戦士」という言葉がある。その言葉からの連想だが、私は「介護戦士」というのもあると思う。





一人で三人の老人の介護を抱えたり、パーキンソン病を患って動けなくなる時もあるような人が、自分とご主人の両方の母の世話をしていたり、遠くに住む親の為に長期に家を空けたり、二つの家を掛け持ちするかのように、片道2、3時間の距離を行ったり来たりの生活をしていたり、そういう事を逸見さんと同じたちの悪い癌で胃の全摘を受けた人がやっていたり、というような枚挙に暇ない実際の例を回りで見るにつけ、そう思わずにいられない。

先日、JR羽越線脱線事故で亡くなった畠山祐紀さん(51歳)の記事に初めて接した時、それには介護に行き来している時の事故死とあったので思わず、「介護戦士の殉死」という言葉が浮かんだ。こういう事故死はどの死も痛ましいが、特に身近に感じた死だった。私自身は大したことをしていないとは言え、回りの介護戦士を通じて、介護の大変さも分かる同じ五十代だからだと思う。

畠山祐紀さんは、山形県に住む実家の母親の看病のため、秋田と山形を頻繁に行き来していたらしい。お母さんは入院されていたという記事もある。山形に長期滞在することも多く、移動には羽越線の特急を利用していたらしい。今回は実家で営まれた葬式へ参加する為だったそうだが、大雪の為に、普段使っている車をやめて電車に乗ったのではという知人もいる。畠山さんは警察官のご主人(56)と3人の娘さんの5人家族。真面目で実直な一家の中で、太陽のような存在だったのではないだろうか。

3年前、町内会班長の順番が回ってきた際、介護が忙しいにもかかわらず、「お互いさまだから」と引き受けたという。大の猫好きでも知られていた。弱った野良猫を見つけると動物病院に連れていった。明るく、温和な人だったという。

年老いた母親に頼りにされながら、そしてこれから結婚して巣立ち、出産も迎えるだろう娘や、そう遠くない将来に定年を迎えて、穏やかな夫婦の老後を楽しみにしていただろう夫を残して先立つことは、どんなに心残りだったろうか。彼女を失ったご家族は、どんなに辛い気持ちで新年を迎えられるのだろうか。切ない、切ない思いがする。

会ったこともない人だけど、何だか生前の姿が目に浮かぶようだ。疲れた体で特急電車に揺られていた時の気持ちも、切実に分かるような気がする。心からご冥福をお祈りすると共に、残されたご家族が悲しみから一日も早く立ち直られることをお祈りする。

by bs2005 | 2005-12-28 23:12 | 徒然の瞑想  

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