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ピンチはチャンス

野球でよく言う。「チャンスの後にピンチあり、ピンチの後にチャンスあり。」
実際にそういう場面をよく見かける。これ自体、正しいと思うけど、さらに言うと、ピンチそのものがチャンスなのだと思う。

友人の中で、今、苦境にいる人が居る。今年の初めに、初めて問題を打ち明けられた。半端な問題じゃない。スリムな長身、キュートな外見に加え、日頃、明るくのんきに見えていた彼女だったので、そういう所に居るとは夢にも思っていなかった。もう5年以上前から問題は始まっていて、どんどん進んで来てしまった挙句の事だったというのに。

大分年の差があるので、そう心を割って話せなかったのかと思った。ところが、彼女によると、自分は、自分の素顔を見せられない人間だったと言う。素顔を見せたら、友達は皆離れて行ってしまうのではないかと、いつも怯えていた。明るく振る舞っていないと皆離れて行くような気がして、そういう事を出せなかったと言った。相手に合わせる事だけで生きてきたと言う。

だから、こういう事を打ち明けられる友達が全く居なかったのだという。私に打ち明けられたのは、もうその問題がにっちもさっちも行かない所まで来ていた事もあるが、世代が違ったからのようでもあった。

そうしてずっと彼女と新たな次元での付き合いが始まった。相変わらず、苦境そのものは厳しい、どころかますます厳しい状態だ。でも、その中で、彼女はすごく強くなって来た。また、ずいぶん、自分の素顔を私以外の人にも見せられるようになって来た。もうそんなに自分をあるがままに出す事に以前程、怯えていない。

自分に自信を全く持てないのだ、だから全ての事を自分がいけないのだと思ってしまうと言っていた彼女。自分を嫌いでたまらないと言った彼女。今でも、まだ完全にそこから脱し切れている訳ではない。そういう彼女になる度に愛の鞭を入れるのが、年上の私の仕事みたいになっている。彼女はその鞭に耐えて、ずいぶん強くなった。自分に自信を持とうという姿勢を持てるようになって来ている。自分をもっと大事にしようとし始めてきている。

彼女の今の状況は本当に厳しい。相手と互角に向き合わないと、相手の思うがまま、言いなりにされてしまう。そして、今でも充分に苦しい状況なのに、それ以上のどん底に突き落とされてしまう危機に晒されている。

強くなること、自分に自信を持つこと、それが今の彼女が闘える唯一の武器になる。その為にも、その武器を早く身に付けなければならないと、こちらも必死になってしまい、行き過ぎてしまうこともある。そんな鞭にも耐えて、彼女は必死に頑張ってきた。色々な事を誰にも負けない位に頑張ってきた。

とんでもない事を言ってくる相手と、互角にやりあえる強さまではまだ獲得できていないけど、今年の初めに泣いていた彼女からは、比べものにならない位強くなったと同時に、以前よりずっと自然に自分を出せる人になってきた。以前より自分を大事に出来る人になってきた。

考えてみると、その彼女の殻をここまで破れたのも、このピンチのお蔭だと思う。今までの自分では通用しない、殻を打ち破らなければ前に進めない、そういうピンチであったからこそ、彼女はここまでなれたのだと思う。そして、素顔の自分を見せても寄り添ってくれる友達が、私だけでない事も分かってきた。このピンチは彼女にとって、チャンスだったように思う。

私自身にもそういう事はあった。自分の殻を破ることでしか乗り越えられないピンチが。でも、そのお蔭で自分の殻を少しでも破る事が出来て、今はそのピンチは自分を変えるチャンスだったと思う。

転んでもただでは起きないという言葉がある。このピンチをチャンスと思うことによって、彼女には大きくはばたく自分を見つけて欲しい。今はとてもとても辛い、苦しい状況にある彼女。でも、いつの日か、自分への自信と愛情が溢れてくる光りで、燦然と輝く彼女に出会える日が来るのを、心待ちにしている。

ついでながら、自分の自然体を無理なく出せる大人に、特別な苦労もなく、そのままなれたのだとしたら、自分をそう育ててくれた親に最大限の感謝をするべきだろう。どんなお金でも買えない、何よりも大事な大きい力をくれたのだから。自分も親になったので、そう育てる事がどんなに難しいことか身にしみる。そういう親に育てられるという事がどんなに幸せで幸運なことか、、。

by bs2005 | 2005-07-06 18:26 |  

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