"Cry, The Beloved Country" が復活させた南アフリカの小さなSL

”Cry, The Beloved Country”(『叫べ、愛する国よ』)は、南アフリカを舞台にした先住民族ズールーの悲劇を題材にアパルトへイトの問題を取り上げた本(1948)です。

私のブログに長くお付き合い下さっている方は、よくご存知かと思いますが、私はかなり簡単に感動してしまう癖に、すぐにケロリと忘れてしまいます。(汗、汗) 自分で猛感動して書いた記事なのに、後からタイトルを見ても、どんな内容だったか思い出せない、、、(涙)。

このタイトルの本も、20年近く前に、コミュニティ・カレッジのESLの作文のクラスの教材だったものです。素晴らしい本でした。数章ずつクラスで論じ、そのテーマに沿ったエッセイを書くというクラスでしたが、それ以外にも教材や宿題が山ほどあり、テストも頻繁にあり、ふ~ふ~言いながら、何とかやり終えました。大変でしたが、この本に出会えただけで、このクラスを取った価値があったと思う本でした。

何度も胸がつまり、読み終えたときはしばらく動けないほど圧倒されました。本当に素晴らしい本でした。でも筋は殆ど覚えていませんでした。(汗&涙)

その本を今日、取り上げているのは、たまたま見る気もなく付けたテレビの番組で、この懐かしい本が取り上げられていたからです。その番組は『世界SL紀行』という番組でした。特にSLに深い関心も無い私ですが、疲れていたので何となくそのまま見ていたら、この懐かしい本のタイトル。筋は思い出せないけれど、めちゃくちゃ感動したことだけ覚えていたので、思わず見続けました。

この本が何故SL番組の中で語られたかというと、この本の中で南アフリカにあるこのSLが何度か出てきて(全く記憶に無い・汗)、車窓の景色の素晴らしさなども描かれているのだそうです。

そのSLが経営難から1985年に廃止されてしまったのですが、この本とこの作家(教師をしていたアラン・ペイトン)の思想に心酔したジュリアン・ペレイラさんという人が役場の仕事を止めて、地元の人々の協力を得てこのSL会社(ペイトン・カントリー鉄道)を2000年に復興したのだそうです。毎週日曜日に一往復だけの運転だそうですが、地元の活性化にも貢献しているとか。

本の筋は殆ど覚えていませんでしたが、感動の強さだけは覚えているので、この本がきっかけでSLを復興させた人の熱意は分かる気がします。発売当時、この本は20カ国で翻訳され、当時のベストセラーになったそうです。日本でも翻訳されたけど絶版になったと聞いたような、聞かなかったような、、(汗)。

日本の方にはあまり馴染みのないことが本当に残念です。英語の本でも良いという方には是非一読をお勧めします。平易な英語なので受験生の副教材にもぴったりだと思います。話が格調高いだけでなく、文体も平易ながらとても格調高く、詩的なのです。大自然の描写が素晴らしく美しいだけに、なおさら、話の悲劇性も際立つ感じがします。特に最後のシーンの悲しさと美しさは圧巻です。

本の筋をちょっとだけご紹介。

ウィキペディアで調べたところによると、アパルトヘイト政策の厳しい頃、南アフリカの小さな村の先住民族ズールーが過疎の村(イゾポ)の貧しい生活から、ヨハネスブルグでの出稼ぎに出て行かざるを得ず、そういう運命の中でのある二つの家族の話が中心です。

黒人の殺人犯側の父親と白人の被害者側の父親がそれぞれの息子を巡った親子の葛藤、そしてお互いへの葛藤に苦しみます。白人の父親はアパルトへイトは当然と思っている人で、反対運動に走る息子を理解できず、疎遠になり、殺されてから初めて息子の書いたものを読み理解して行くようになります。黒人の父親(牧師)は、黒人の為に戦ったその息子さんをよりによって殺めてしまった生きている自分の息子(結局死刑になってしまう)と対峙します。登場人物は他にも色々居て、南アフリカの問題に真正面から向かった本でもあります。

人間の哀しさ、弱さ、強さ、美しさ、素晴らしさ、全てが描かれている本です。筋はけろりと忘れてましたが、それだけは強烈に残っています。忘れていながらおこがましい限りですが、飛び切りお勧めの本です。古い本ですが、人種を越え、憎しみを越えて共生が求められる現代にこそ、読まれるべき本だと思います。もう一度翻訳本が出て欲しいですが、無い分、この格調高い英語に触れる良い機会ではあるかもしれません。映画は1951年と1995年に出来たそうですが、原著に是非当たって欲しいです。

ウィキペディアの参考記事:「ズールー族」では無いので、とりあえず「ズールー語」で、、
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by bs2005 | 2009-03-25 05:12 | 忙中閑の果実  

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