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天童荒太さんの優しさ

私は彼の本、『永遠の仔』』『あふれた愛』しか読んでいないのですが、どちらも、彼の「傷ついたもの」に対する優しさと真摯さを感じて、すごく好きになった作家です。さりげなく書いてある文に、胸が一杯になる事が度々あるのです。

たまたま昨日あっこさんがくれた「婦人公論」バックナンバー(8/7 2004)で彼の記事が載っていました。

彼の真骨頂を見せる箇所を紹介したいと思います。
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『永遠の仔』以来、思うようになったのですが、いまの時代は、生きることに対して、意味や価値を求めすぎているんじゃないかなあ。生きているだけではダメで、そこに何か付加価値がないと、生の意味がないと思い込んでいる。でも、本当に傷ついている人たちは、毎日生き延びることさえも、すごく大変なことだから、生きているだけで褒めてあげてもいいんじゃないかな、と思います。

「人間は生まれてきた以上、何かを成すべきだ」という価値観はまちがった考え方ではないんですよ。だけと、ひきこもりの人たちを苦しめているのは、そういう価値観だったりするでしょう。何かを成さない自分の人生を無意味だと思って、自殺未遂をしたり。

でも、繰り返しますが、生きているだけで、誰かを支えている可能性ってすごくあるから、生きているだけで十分です。十分、成しています。(p.22)

考えてみると、声をかけるとか、相手にふれるとかの行為は、最近おろそかになっているかもしれませんね。どうしても個や家庭に閉じこもって、人に対しても踏み出すことをしり込みしてしまうから。

でも、人の心って、ひじょうにシンプルなものですよ。優しくされたら、喜ぶ。笑いかけられたら、笑ってしまう。冷たくされたら、つらい。ひどくされたら、悲しい。僕なんて褒められたりしたら、うれしくてうれしくて、跳び上がってしまいます。植物だって、褒めるときれいな花を咲かせるというじゃないですか。

生き物は、本来シンプルなんですよ。いのちはシンプルです。(p.23)

by bs2005 | 2005-06-05 02:48 | 賛辞のあなた  

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