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驕れる者は久しからず

約30年近く前、初めてアメリカに住むことになった時、アジアの人に会うとよく言われたことがある。それは「日本は凄い。私の国も日本を見習って成長したい。日本人のように勤勉に頑張って、日本のような国になりたい。」という言葉だった。

それから10年後、再びアメリカに住むことになった。しかし、もうその言葉をアジアの誰からも言われることはなかった。ただの一度も。

それどころか、5.6年前位だろうか。他ならぬアジアの人から、「日本人はまだそんな事をやっているのか」という言葉を聞くようになった。頻繁ではなかったけれど、そういうことを言われるようになった事自体に私は愕然とした。そして、その頃から少しずつ、アジアで業界トップの会社が日本ではなく他のアジアの会社ということが始まっていた。

3.4年前位からだろうか。日本に行くと、「最近のアジアの国の進出ぶりは凄い。ひょっとすると日本も10年も経ったら追い越されるかもしれないね~。」という言葉を聞くようになった。「私の実感では10年なんて先じゃないし、既にそれは始まっている」と言っても、キョトンとした反応しか返って来なかった。

最近、日本のある大企業の人と話す機会があった。彼の会社で新規採用をするので、アジアからもかなり応募があった。勿論、国内の一流と言われる大学からも応募者は沢山来た。

そして最終選考のトップに残ったのは数人のアジアの人々だった。マレーシア、中国、インド、等々。皆、語学も堪能(中には数ヶ国語も自由に操る)、知識も大学卒で日本の大学院卒のレベルに到達している。何よりも人間としての成熟度が、日本の大学生とは比べ物にならないほど大人だった。喉から手が出る程、欲しい人材だった。

しかし、彼は涙を呑んで彼らを採らなかった。実際に彼らを採用したとき、彼の会社でその有能な人材を生かせるか?大企業病体質のナアナアの会社の中でも、日本人の同期の中でも、群を抜いている彼らは浮いてしまうだろう。彼らの方に不満が沸き起こってくるだろう。採用しても宝の持ち腐れ状態になるのは必至だ。そう思ったら、どうしても採れなかったという。

彼は「他の日本人に比べて優秀すぎる、というのが落とす理由なんて残念でたまらない。でも、日本の会社で、彼らを生き生きと使いこなせる会社が一体幾つあるだろうか?」とも言った。

彼の判断が正しかったかどうかは論の分かれるところだろう。でも、彼が言った「今、日本の学生はアジアの優秀な学生の足元にも及ばない。知識は勿論、人間としての成熟度もやる気も、、。トップクラスの大学ですらそうだ。リーダーとなるべき人材でこんなに遅れを取ってしまった日本は、これからどんどん取り残されて行くだろう。」という言葉が胸にずしんと残った。

by bs2005 | 2008-07-09 22:03 | 徒然の瞑想  

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