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本当の国益とは何か

民主党の前原前代表は「テロとの戦いから、日本が抜けることは国益に反する」と述べたという。何がテロとの正しい闘い方か、何が日本の本当の国益かという視点が抜け落ちている。



問題はアメリカのやり方がテロとの闘い方としては無効であることが既に証明されていることだ。アフガニスタンでの戦いは、一時的にタリバンを弱小化させる効果しかなかった。今ではほぼ以前に近い回復ぶりだという。アメリカを支援したパキスタンは今、国内テロが激しい国になっている。アメリカのああいう闘い方を支援した国は皆、テロの攻撃に晒されている。

テロリストを生み出すものは極度に高められた怒りである。怒りは悲しみが深まり、歪んだ形に姿を変えたものだ。怒っている人間に「怒るのは良くない」 とか「平和な心を持て」 というのはその悲しみに遡り、寄り添う気持ちがない限りは、一見人道的な様相とは裏腹に、その高みに立ったままの観念性故に、非人道的ですらある。

テロの根源には飢え、貧困の地球的格差、あるいは不当な扱い(物質的なものだけでなく、文化的、宗教的、精神的なものも含めたもの)がある。そこに遡らずに現実のテロリストをいくら叩いても殺しても、必ずより深い怒りを抱えた新たなテロリストが生まれる。力による制圧や観念的平和主義が無効なのは、その悲しみが放置されているからだ。

テロリストとの闘いは、本質的にはそういう悲しみを取り除く方向に行くべきだ。しかし短期的にはそういう悠長なことは言ってられない面もある。これは一つには資金源を絶つ。もう一つは、徹底的に自国の警備体制を整え、国際警察との緊密な連携体制を作る。武力が無効である以上、そういう方向が求められるべきではないだろうか。特効薬的な効果は無いにしても、既に無効性が証明された逆効果しか生んでいない武力以外には、そういう地道な道しかないのではないか。

自分の国内をテロ活動から徹底的に守ることの方が大事ではないのか。日本はそれを充分にやれているだろうか。飛行機はともかくとしても、新幹線、電車、地下鉄、バス、原発等々はほとんど無防備なのではないか。人の頭の蠅より自分の頭の蠅を追うべきではないのか。日本がアメリカに協力するとしたら、アメリカの武力攻撃への追従ではなく、テロから国内を守るノウハウの進展ではないのか。それが平和憲法の国にふさわしいありかたではないのか。

資金源を絶つ一つの方法としては、今のアフガニスタンでは麻薬が資金源だという。その麻薬のけし栽培は、貧困に追い詰められた農夫たちがやっている。背に腹は変えられないからだ。ミサイルや劣化ウラン弾、戦車、戦闘機等々の軍事費を彼らのまっとうな農業を支える(中村さんの活動のような)費用に回すとかそういう形で、現存するテロリストの資金源を絶つ道が考えられるべきだ。

アメリカがテロの対象になっているのは、彼らの悲しみを激烈な怒りにまでしてしまったからだ。そのアメリカの武力で抑えるという方向ーさらに怒りに火を注ぐ誤った方向を日本が支えれば、日本は間違いなくテロの標的になる。それが日本の国益になるだろうか。

今、世界の全ての国が考えるべきことは長期的な目で国益を考えることと同時に、貪欲や恐れに支配された国益ではなく、自国だけの国益を超えた人類共生を目指す国益である。

by bs2005 | 2007-08-12 19:10 | TON同盟  

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