「関与の有無・強制の有無」論の不毛性

従軍慰安婦問題でも、沖縄集団自決問題でも、公式の関与や強制の有無があったかどうかが論点になり得るかのような態度が見られる。極論すれば、たとえそれらが無かったとしても、それをどのように証明し得ても、そんなことは問題にならない。

そんなレベルの論議を持ち出せば、日本は過去の過ちを反省する態度が無いと思われるだけだ。何故そうなのか?



私は戦後生まれだから、そういうものを直接的体験として真偽を論じられる立場にない。史実に徹底的にあたって検証できる学問的訓練も受けていない。桜井よし子さんの講演は20年以上前に、たまたま聴いたことがある。

彼女はたまたま史実やら直接的体験を持つ人たちの話を聞いて、一般的に流布されていることがいかに歪められた情報かを知り、報道に携わってきた者の責任として、真実の発掘に徹底的に関わるつもりだと語っていた。彼女の真摯な姿勢を疑う根拠も特に持っていない。

太平洋戦争を徹底的に批判している山本七平さんも、著書の中で、南京大虐殺の報道がいかに誇張されセンセーショナルに歪曲されて伝えられているかという問題を書いている。勿論、事実そのものまで否定してはいないのだが。伝えられ一般に史実としてされていることの全てが正しいものではないだろう。誇張も嘘も中には相当程度あるだろう。それは今の日米の報道の誇張や嘘を見ていても、容易に想像つく。

アメリカの議員の大半もそれが史実かどうか、それを直接に検証できる立場には私以上にないだろうし、日本の国内の史実に徹底的にあたる時間も語学力もないだろう。それなのに、ポストに掲載されたという意見広告が、何故彼らの反発をこれだけ買ったのだろうか。

桜井さんは、従軍慰安婦には無理やり連れて来られた人ばかりでなく、貧しさから積極的に自分からやってきた人も沢山居るのだというようなことも言われていたと思う。それが史実としても、問題の本質には関係ないのだと思う。公式に関与があったかどうかもそうだ。百歩譲って(
百歩でははるかに足りない感じだが)公式関与がなかったことを史実として証明できても、問題の本質には無縁のことなのだということを理解するべきだと思う。

問題の本質は公的関与の有無にはない。強制かどうかにもない。問題は、従軍慰安婦という存在があったということであり、沖縄の集団自決があったということなのだ。このことがなかったと言える人は、全く居ないだろう。

従軍慰安婦に関しては、自分から積極的に来たとしても、そういう彼らの貧困を逆手に取って利用したという事実は否定しようもない。集団自決に関しても、最後に毒をあおったり、家族を殺したりしたのが、沖縄の人の自由意志(?)であったとしても、手榴弾やら青酸カリを手渡し、米軍に捕まれば、股裂きにされたり、陵辱されるという悪質なプロパガンダで、心理的極限状態に彼らが追い込まれていた故であることは否定のしようもない。

問題は、そういうことが起きていることを知りながら阻止することもなく、救出をするわけでもなく、積極的に見て見ぬふりをしたのみならず、むしろ助長させ、利用したところにある。指導者層がそれを知らなかったとすれば、知らなかった責任も深刻である。どちらにしても責任逃れが出来るようなものではない。また、その意味では日本人全員がその責任を問われている。関与の有無にかかわらず、だ。

勿論、事態を変える力を持ちえていた指導者層や直接に関与した人間と、指導者に逆らえばどうなるか分からない無力な庶民や直接に関与しなかった人では、その責任の重さは決定的に違う。重さは違うけれども、そういう負の遺産を背負ってしまった以上、今の私達に出来ることは、日本の国としてのその責任をはっきりと認め、謝罪する気持ちを持つことである。

公的に関与があったかどうか、無理やりであったかどうかは問題にはならないというのはそういうことだ。そういうところで史実云々を問題にするのは、一番肝心なところで日本の犯した過ちを反省する態度も、その過ちを自らの問題として引き受ける姿勢にも決定的に欠ける。だからこそ反発を買うのである。

今回の決議は、北朝鮮の拉致問題と距離を取りたいという政治的狙いも底にはあるかもしれない。そういうこと一切を考慮に入れても、日本が過去に対して持つべき責任から免れるものではない。

以上書いたことは、たとえそれらが無かったとしてもという極論だが、全てがそうでないにしても、既に史実として認められていることも多い。極論で言っても、史実で言っても、謙虚に受け止めるべきことを、あのような発言をし、昨夜のニュースでは、広告を出した面々は、そもそも河野謝罪自体が史実に基づいていないから撤回するべきだと言っているそうだ。それが国際社会の中でどんなに姑息で卑劣に見えるか、徹底的に自覚してもらいたい。
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by bs2005 | 2007-06-27 16:55 | 異論・曲論  

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