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安倍首相訪米の実像

アメリカに住み、テレビジャパンの報道に触れていると、いかにアメリカの中でアメリカにとって都合の悪いことがニュースにならないか痛感させられると共に、日本の報道でも都合の良いようにしか報道されていないことを痛感する。





今回の安倍総理の首脳会談などもそうだと思う。日本で報道されているようなものではない。都合の良い部分だけ、都合の良い印象が伝わるように報道されている。

安倍さんが来た日は、こちらではイラクへの軍費を制限する法案が議会で可決された日であり、民主党の次期大統領候補間のテレビ討論会(正確には数えなかったけど、6~7人居る。)が行われた日なので、安倍さんの訪米は全く無視された。

翌日、大統領がイラク法案に関しての意見を求められた場が安倍さんの首脳会談の後の記者会見だったので、その場でこう言ったという形で触れられただけで、画像には一切出なかった。たまたま、その場だったから辛うじて名前が出たという感じだ。北朝鮮に関しては、ブッシュ大統領が強硬な路線への可能性を示したということが付け足しのように報道されたものもある。

日本の放送を見ていると、大統領は下にも置かないもてなしで、親密で、北朝鮮の拉致問題にも日本への強い支持を示したように見える。しかし、あの発言は彼の声明の中では一切触れられていない。横田さんのことだって、質疑応答で訊かれて答えただけである。外交辞令を超えるものではない。要するにリップ・サービス以上の何も保証しない。

ブッシュ大統領はスピーチの中で不自然なほど安倍夫人を讃えあげていたけれど、そういう個人的親密さをアピールすることによって、義理人情で動かせる人物と安倍さんを見通したからかもしれない。日本にとって有利なことを何も約束していない中味の無さをごまかすために長々と夫人を持ち上げたようにさえ見える。

首脳会談に時間をあれだけ割いたのも、今の四面楚歌の中でこの会談が逃げ込めるかっこうの空間だったからではないかとアメリカ在住の作家、冷泉彰彦さんなどは揶揄している。

脱北問題も議会で討議されているが、拉致問題もどちらも自ら大統領が由々しき問題として一般声明の中で注意を喚起を促したことは私の知る限りただの一度もない。マスコミも取り上げない。アメリカ人の殆どが知らない問題だ。

何故知らせないか。本気で北朝鮮の人道問題と戦う気はないからである。必要な場合は、妥協をする気でいるのに、あまり相手を悪者にしてしまうと引っ込みがつかなくなるからだ。ブッシュ大統領はむしろ、安倍さんが跳ね上がった行動を取らないようにけん制しただけだとも言える。

アメリカは北朝鮮が核をテロリストに手渡さないという保証が得られたら、拉致問題は今後の課題として先送りしてー事実上見捨ててー手を打つだろう。もっと言えば、日本が攻撃されても、在日米軍への脅威がなく、反撃がアメリカの国益に反すれば、抗議声明どまりで、手を汚したりしないだろう。アメリカに住んでいれば、そんなことは肌で分ることだ。

アメリカを助けに来てくれる正義の味方、スーパーマンのように思う幻想は持つべきでない。それはアメリカが悪いのではない。どの国も国益の範囲でしか動かないのは当然のことだ。国と国の関係は義理人情の世界ではない。そんなものを持ち込むことは危険きわまりない。

日本はもっと自立した発想で生きていかなければならない。同盟関係を破棄することには反対だけど、そこそこにやっていれば良いのだ。集団防衛などという一蓮托生だけは避けるべきだ。避けるのが日本の国益ということをはっきりと自覚するべきだ。

アメリカへの義理から集団防衛などに突き進むほど愚かなことは無い。軍事力では問題を解決できなくなってきているのは、世界一の軍事力を持ったアメリカの今日の姿を見れば明らかだ。軍事力ではなく外交力で辛抱強い解決を図ることが日本の安全にはもっとも重要で唯一生き残れる道だと思う。

核以外の軍事力はいくら行使しても泥沼に入っていくしかない。そして核は使うわけにはいかない。日本が核を持っても大した力にはならない。孤立するだけだ。だとすれば、むしろ戦争放棄・非核の立場を錦の御旗として有利に利用する方がはるかに賢明で、したたかで有効な道だろう。

華々しくいかにも成功した首脳会談のように報道されているが、ブッシュ大統領は肝腎なことは一切言質を与えていない。アメリカにとって好都合な集団防衛に肩入れする安倍さんの背中を押した以外は、、。報道の与える幻想は怖い。

by bs2005 | 2007-04-29 02:36 | TON同盟  

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