どちらが本当の夢物語か

日本に帰ったとき、大田総理の憲法9条の討論番組を見た。着いた翌日で、他のお笑いの話題も多かったので、待っている内に寝てしまったり、それが始まってからも眠りに落ちてしまったことが度々だった。



それでしっかり見ていたわけではないけれど、大田総理を批判する側の反論は、要するに、現実を見ろ、馬鹿な空想論展開しているんじゃない!という感じだったように思う。それに対しての大田総理は、でももう戦争という手段に戻りたくないと普通の人々が思う気持ちは無視できないのじゃないか、そう思ってしまうのだからというような感じだったと思う。

基本的には大田総理に反論する側は、素人が何を言うか、何も知らないお笑い芸人が何を夢物語を語っているのか、もっと勉強しろという感じだったように思う。非常に居丈高で、傲慢な態度だった。それに対して太田総理の反論は確かに弱々しい感じだった。いたいけな感じで母性本能をくするられる位(笑)。

こちらに戻る飛行機の中で初めて、彼と中沢さんの憲法9条世界遺産論を読んだ。と言っても、流し読みでまだちゃんとは読んでいないのだけど、大田総理は、本当はかなり深く考え、もっと強力に反論できる勉強もしているし、相手の論のほころびを見抜く力もあるということは分った。テレビの場面では、自分のお笑い芸人としてのスタンスを崩さないようにしていたのだということも。

それを見抜くことも出来ずに、多分、あの本を読むことすらせずに、得意気に反論を言い放っていた人々の愚かさを改めて思った。しかし、ああいう形で普通の人々の直観を恫喝し、夢物語と切り捨て、自分を知的エリートと思い込んでいる人間は多い。そして、それで怯んでしまう謙虚な普通の人々はもっと多い。それでそういうことに関して述べておきたい。

軍備増強ーそれを突き詰めれば核武装まで行き着くーや、集団防衛を現実的選択としてあげる人々は、果たしてそれが軍事的に、また国際社会のダイナミズムの中で、どれだけ本当に現実に有効なものか、どれ位真剣に具体的に検証しているのだろうか。どれだけ長期的展望の中で見ているのだろうか。人類の未来を考えているのだろうか。

アメリカの世界戦略ー自由と民主主義を守り、それを世界に普及して行くことが世界の究極の理念であり、平和と発展をもたらす。それを実現できるのはアメリカを措いてない。だからアメリカが世界を支配するべきという戦略ーが今破綻しているということをどう考えているのか。アメリカの世界戦略が夢物語になっていることをどう考えているのか。

民主主義にはアメリカが考えるような形以外のものもある。自由もしかり。アメリカの価値を押し付ける今の形が、結果としてテロしか生んでこなかったこと、そのテロに対して火に油を注ぐようなことしか今の世界戦略が果たしていないこと、それをどう考えているのか。

ブッシュ一人の問題ではない。アメリカは建国以来、それを理想に掲げてきた善魔の国だ。ブッシュの首をすげかえても、アメリカの基本戦略は変わらない。細部の変更があったとしても。イラク戦争開戦に民主党が賛成票を投じたことからも、それは明らかだ。歴史的にも、どちらの政党も同じ戦略の枠の中でやってきている。

その善魔性の自覚による世界戦略の転換しか世界の平和は生み出せないと、これほど明らかになっている今、それに代わって共生の思想を持っていかないと地球は破滅の道に向かうということがこれだけ明らかになっている今、アメリカの戦略にのっとった集団防衛がもたらすものは何か。核武装がもたらすものは何か、それを現実的にどこまで考えているのか。

日本は今アメリカの同盟国である。アメリカの世界戦略と一線を画すべきだと言っても、同盟関係を直ちに破棄するべきではない。アメリカは敵に回すと怖い国だ。アメリカ程冷徹に国益を考えている国はない。アメリカを守ることが民主主義と自由を守り、従って世界の未来を守ることだと固く信じているからだ。だから、自らは核武装しながら、よその国の核武装には武力を駆使してまでも反対するという矛盾を矛盾と感じない。アメリカを善魔と私が言うのは、そういうことだ。

破棄という形には出来ないけれど、これ以上の係わりを持つべきでないし、核装備への誘いにも乗るべきでない。日本は今その微妙なバランスを保ちつつ、したたかに生き抜いていかなければならない。アメリカの世界戦略との同調にそのまま突き進もうとするのも、あるいは今の段階で同盟を抜けようとするのも、どちらも日本を守る道でも世界の未来を守る道でもない。

現実的である為には、非常に高等な頭脳的日本独自の平和戦略ー共生論が今必要とされている。九条世界遺産論がそれであるかどうかは別として、それが共生の論理を目指す一つの試みとして大きい意義を持っていることを見失ってはいけない。

世界遺産論をただ夢物語として哂っているその足場が現実にどれだけ崩れているのか見えずに、軍事力の強化で日本が守れる、地球の平和が訪れると思っている彼らの方こそ、夢物語の世界で惰眠を貪っているのだと思う。共生論構築の道こそが現実的道だ。

彼らの言う現実論はただ恐れにのみ基づいている。恐れで現実が見えなくなった非現実的なものだ。月に行くということを初めて聞いた人々は、それを夢物語として笑った。人類の夢と理想の力を信じられない人は、何が本当の夢物語かしょせん理解する力は無いのだと思う。夢は実現する為にこそある。その意味で最も現実的感覚を必要とするものである。
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by bs2005 | 2007-01-23 02:47 | TON同盟  

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