『団旗はためくもとに』を読んで

私の一年の読書の時間の大部分は日本への往復の飛行機の中と日本に居る間です。(汗)今回もそれで大分読みました。その中で重松清さんは前から興味あったのですが、どれを選んでよいか分らず、今まで読まずに来てしまいました。今回、新潮文庫の今読みたい本のランキング6位に彼の作品が入っていたので読みました。『小さき者へ』というものです。



これに収められている短編は全て思春期の悩み迷う子供を抱え、自分自身も人生の岐路の中で悩み迷う親の姿を捉えています。 その中でも特に『団旗はためくもとに』というのが、とても後味のよいものでした。学生時代、応援団長だった父親は、今も昔も硬派。娘の友達からは、やくざと間違われたりしていますが、生一本な人です。

娘は高校生で中退を考えながら、何のために中退するのかという目的を見つけられずにいます。その娘に対して、この父親は真っ向から反対します。他の短編で、「14歳の少年が一番許せないのは、わかってくれないおとなではなくて、わかったふりをしているおとななのだ」と書いていますが、この父親はまさに前者です。分らないとはっきり伝え、立ちはだかります。

そして応援団の押忍の心をこう伝えます。

「黙って、忍んで、でも負けていない。それが押忍の心。」「人生なんて後悔の連続なんだよ。」「そのときに押忍の心が生きてくる。人生には押して忍ばなきゃいけない場面がたくさんあるけど、いちばんたいせつなのは、何かに後悔しそうになったときなんだ。後悔をグッと呑み込んで、自分の決めた道を黙々と進む、それが『押忍』なんだ。」「押忍の心は、言い訳をしない心なんだ。」と。

中退するのなら、あくまでも反対する自分を乗り越えるものを持って中退せよという父親の真剣に子供と向き合う姿に対峙しながら、娘は美容師という選択を選んで学校を辞めます。その最後の日、その父親は、、、。ここから先はお読みになる方の為に書かないでおきます。

自分の職場の上司が、筋を通す人であったゆえに重役ににらまれ、リストラされ、出世を気にかける人々は口実を設けて、送別会にもほとんど来ず、その父親は彼一人でその上司に三次会まで付き合い、最後に改札口を抜けて行こうとする後姿を見送りながらたまらない気持ちになります。そして、、、、これもお読みになる方の為に書かないでおきます。

どちらも胸にぐっと来るシーンで、全編、ドラマを見るような感じでした。そんなドラマがあったような気がして、検索で調べたら、その有無は分りませんでしたが、『ちいさき者へ』の中でこれが一番好きと誰もが言っているのが印象的でした。親子関係の小説を読みたい方にはお勧め。
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by bs2005 | 2007-01-14 03:34 | 忙中閑の果実  

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