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年を重ねる愉しみ

大分前の日経で、80代のある作家が、バリ島で、海の中を棺を掲げて、肩まで浸かりながら、夕陽の中を歩いて行く葬列を目撃し、魂を揺さぶられる感動を受けたという文を載せていた。

自然と一体になった人間の営みの厳粛な美を、プロらしい簡潔な文で感動深く伝えていたのだけど、その文の中で私が一番感動したのは、その感動は50代、60代の自分だったら、そこまでのものではなかったと言い切れる、80代の自分だったから、あそこまでの深い感動だったのだと書いていることだった。




そうか、80代になって初めて分かる感動というものが、人生にはあるのだなぁと、その年になることへの愉しみを初めて覚えた。

自分を振り返っても、いっぱしに分かっていたつもりの30代、40代だったけど、この年になって初めて分かると思えることがある。人間には、同じ経験をしないと、分からないことがたくさんあるけれど、その年にならないと分からないことも、聡明さとか人生経験とかに関係なく、あるように思う。

私は年齢より未熟な人間なので、30代、40代でも、私よりはるかに大人だと思える人は沢山いる。でも、そういう人達でも、その年にならないと、見えないものがあるように感じる。そして、それはそれなりに良いことなのかもしれない。見えないからこそ、向かって行けるものもあるのだろうから。

50代も半ばになった私だが、長く生きて、人生の終りに近づいて行かないと、見えてこないもの、近づけば近づく程、見えてくるもの、そういうものがあるのだと思えば、年を重ねることも少しワクワクする。

by bs2005 | 2005-12-17 00:20 | 徒然の瞑想  

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