萬里さんのお返事の中から
2005年 08月 02日
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鍵は、冒頭の「毒虫」にあると思います。他の訳は大方、ただ
の「虫」です。事実、「毒虫」は「虫」ではないのか、
という手紙が来ました。それが、今の定説なのです。
しかし、僕は、あえて親父の訳語「毒虫」のままにしました。
小説家なんていうのは、毒虫なんですね。小説家が家族にいる
と、親戚中まで、迷惑しますよ。その点、海外に在住、というのはいいですよね。
「断食芸人」は実在したようです。それもひとりではなく。
『断食芸人』の方が、訳文は気に入っています。
カフカ自身、できれば「食べる」ことはしたくなかった人らし
いです。
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以下は、これを読んだ感想です。
毒虫という方が、私にも正しい訳に思えます。そうでないと、あの話の迫力とか、カフカの思いも薄れるような気がします。
これを読んで思ったのは、カフカが小説を書きたいという思いに駆られて、その道を歩みだした時に、彼は家族の中で毒虫に変身した自分を感じたのだろうなという事です。このお返事で、よりあの『変身』を理解できた感じがしました。
小説家が毒虫というのもよく分かります。何かで、真の小説家になると、その書くものによって、家族、親、自分の愛する人全てをぼろぼろに傷つける事になる。その覚悟がいるし、その非情さを持たなければ本物の小説家にはなれないと書いてありました。その覚悟がないのなら、小説家になるなと。その覚悟があっても、その犠牲に見合うものを書ける才能を持たない限りはなるなと。
カフカにはその才能があったのだから、まあ、許されるでしょうけど、私にはないので、海外に居ても、大それたことは考えないで居ようと思います。家族や回りに無駄な傷を残すだけに終りそうですから。(笑)
断食芸人というのは、本当に居たんですね!カフカ自身も食べたくない人だったとか。興味深かったです。萬里さん、お返事有難う!
by bs2005 | 2005-08-02 06:49 | お目を拝借