生ぬる過ぎやしませんか?

NHKのニュースを見ていたら、原発業界は今まで「事故を起こさないことに重点を置いてきた」ので「事故が起きた後、どうするか」という点に関する関わりが手薄だった。今後はそういうことも考えていかなければいけない、と言っていた。

一見、もっともらしいけど、生ぬる過ぎやしませんか?

普通の頭で考えたら、「自然」に「人間」が敵うわけないのだし、どんな想定外のことが起きるかも分からないのだから、その場合にどうするか、危険きわまる原発の安全を守る為のあらゆる手を尽くしてくるべきだった筈。両方とも必死にやってくるべきだった筈。それが「どんなことがあっても安全」と住民を説得してきたことに対する誠意というものだろう。

前者にいくら重点を置きすぎたって、後者をあそこまで何もしてこなかったことの説明には全くなっていない。彼らは意識的にサボタージュしてきたのだ。儲けにならない部分、経費が掛かるだけの部分、原発推進の妨げになる部分は無視してきただけである。だからこそ、内部告発は握りつぶされたし、外部から警鐘を与えてきた人々の声も無視されてきた。

フランスではそういう事故が起きたらどういう対処をするかという具体的なプランがあり、原発の近くの住民にはいざという時の為にヨード剤も配ってあるという。放射能汚染した水の処理能力もとっくに持っているという。

アメリカも原潜は汚染水を海に流すわけには行かないから、当然フランス同様、汚染水の処理の仕方も知っている。何かが起きたら活躍できるロボットも準備している。日本は何もしてこなかった。外国に頼るより他なかった。頼ってもハードもソフトもゼロから作り上げなければならないから、とても当面は間に合わない。

この事故の処理に数ヶ月は少なくても掛かると最近渋々認めたけれど、どうしてそうなるか、どういう展望のもとに、その数字が出てきているか一切説明が無い。多分、処理するハードとソフトの完成だけでも、それだけ掛かるということなのだろう。

その挙句が諸外国を唖然とさせ激怒させた海への大量放出だ。比較的汚染度が低いと言ったって、高度に汚染された方と比べればの話で、実際にどのレベルの汚染度かは私の知る限り、一切発表されていない。怖くて言えないのだろう。スリーマイル以上であることは既に外国では周知の事実であり、チェルノブイリを超えてしまうのも時間の問題、知らぬは国民ばかりと思っている国は少なくない。

スリーマイルの時には、政府直轄の安全委員会が直ちに直接指揮をとり、主導権を握って処理した。会社に主導権を取らせなかったという。だからこそ、すぐ廃炉の策が取れた。企業の損得を抜きにして動けたから。そしてその時の委員長は現場から1キロの所で記者会見をやった。その姿に国民は事故が起きていても自分達は安全なのだと信じられ、風評被害も起きなかったという。彼は事故を最小限のダメージに抑えたヒーローとして讃えられたとか。

日本の原子力安全・保安院とやらは一体、今まで何をしてきたのか?テレビで他人事のように経過報告を涼しい顔でしていたけど、本来は事故が起きた途端に、自分達が先頭に立って主導的に処理しなければいけなかった筈だ。スリーマイルのように。

原子力の専門家なのだから、フランスやアメリカではとっくに出来ているいざという時の体制の知識位は当然得ていた筈である。そうでなければ完全に給料泥棒である。でも知識は得ていても、するべきことは何もしてこなかった。だから、ああいう場面で雁首を並べて他人事のようにぬらりくらりと報告をするしか出来なかった。彼らに出来ることなど他に何もなかったから。政治はそういう体制を全く作ってこなかったから。

政府は今頃「原子力安全・保安院は原発推進も一緒にやっていたので安全がおろそかになっていた面がある、今後は分離する」と言う。安全、保安を名乗るからには最初から一番にやっていなければならなかった当たり前のこと。こういうことが一切、全くやられてこなかったことは、こちらに重点を置きすぎたとか、気を取られていたとか、そんなことである筈がない。

彼らは意図的にそれを無視し続けてきたのである。気づかぬふりをしてきたのである。言ってみれば確信犯である。それをこんなに生ぬるい言い方をするのは、こういう風潮をマスコミも一切問題にしてこなかったからだ。内部告発、警鐘はマスコミにも届いていた筈だ。彼らが中でどうにもならなければ、最初に接触するのはマスコミであり、反原発勢力だろう。だけど、マスコミは政府と原発業界と一緒になってそういう声を握りつぶしてきた。それはマスコミのトップも企業の論理で動いてきたからだ。その結果が今のこの無残な状態である。

汚染した水の処理も出来ずに海に垂れ流した東電ひいては原発業界の無知と無力は、その怠慢と傲慢から生じてきたものであることは、事故に備えてきた国からみれば火を見るより明らかだろう。一方に神経を注ぎ過ぎて、もう一方が疎かになったというようなことである筈がない。冗談もいい加減にしてもらいたい。

1700万円を自民側に献金=東電役員、07年から3年間-「組織ぐるみ」の指摘もという記事は、この問題の氷山の一角を表わしている。

いざとなったらどうするか何の実践的知識も手段も体制も持たずに、55基も国内に原発を作ってきた国として日本は世界中に生き恥をさらしてしまった。今回の事故は明らかに人災であり、最も責めを負うべきは今までの政治家、原発業界、マスコミ業界のトップで癒着してきた人々である。そして、こういう事態を許してきてしまった日本人皆の責任でもある。

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追記:参考記事 「現場放棄、東電批判を"自粛"......震災であぶり出される大手メディアの素顔」より

「これまでテレビはもちろん新聞・雑誌など多くのメディアは、東電、そして各電気会社の連合会である電事連から莫大な広告出稿という恩恵にあずかってきました。東電だけで年間220億円以上もの広告費が垂れ流されていた。ゆえにめったなことで東電批判はしない、タブーとなっていた」(メディア事情に詳しい関係者)
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by bs2005 | 2011-04-09 13:03 | 異論・曲論  

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