『The Art of Racing in the Rain』を読み終えて


d0042100_10325298.jpgアメリカ人の友人が勧めてくれた本の中の一つ、『The Art of Racing in the Rain』を読み終えた。

アメリカ人に本を薦められることはよくあるのだけど、日本語の本ですら積ん読の山を築いている私、英語で読み終える自信もなく、今まで殆ど無視してきた。なのに何故か今回は読んでみようかなという気になった。でも、買ったら間違いなく積ん読の山に紛れ込む。それで今まで利用していなかった図書館に登録して申し込んだ。

順番待ちで4人目だったが意外と早く借りられることになった。貸し出し期間は3週間、三回まで更新できるという。期限があった方が必死で読むだろうし、合計9週間ならいかに私でも読めるだろうと思ってダラダラ読んでいる内にあと3日で最初の期限が来るという。そこで更新しようとしたら、何と順番待ちの人が居る本は更新できないのだそうだ。それで慌てて四分の1位しかまだ読んでいなかった本を、用事が溜まって余り時間が無い中、必死で読み終えた。最後は期限ぎりぎりまで図書館に腰を据え読める所までという戦術で読み終えた。

読み終えてみたら、実に良い本だった。自分が思っていたような本ではなかったけれど、最後は図書館という公共の場で涙ぐしゃぐしゃ、カウンターに返しに行ったのだけど、係りの人も私を見て変な顔をしていた。最後は図書館でという作戦は失敗だったけれど、それでも読む価値のある本だった。

日本語になっているのかどうか分からない。でも、いつか映画にはなるような気がする。そういう要素を沢山持っていた。既にプロモーション・ビデオ(?)は出ているみたい。→追記:映画も2012年に出来るようだ。楽しみ!


主人公は犬で、犬の立場から書いてある本ということだったので、何となくコミカルな本を想像していたのだけど、ユーモアのセンスはそこかしこにありながらも、もっともっと深く、もっともっと優しく温かく、切ない本だった。

主人公の犬の飼い主はレーサーなので、レースに関する話が沢山出てくる。彼は雨の中で雨に逆らわず、しかし雨にひるまずに忍耐強く冷静に巧みにスピードを失わずに運転できるという特技が、レーサーの中でも目立った存在だった。主人公の犬は、そういうご主人と一緒なので、レース通である。

レースやレーサーに特別の興味は無い私には、だから初め、なかなか話の中に入り込めなかった。しかし、読み進む内に、主人公はレースを語るときに、同時に人生をレースにたとえて語っていたのだということがわかる。

独身だった頃から飼い主と一緒に暮らし、二人きりの生活に彼の奥さんという存在が入り込み、初めは戸惑いながらも、その生活に馴染み、やがて子供も生まれ、家族の一員として暮らしていく主人公。

しかし、やがて悲劇がこの家族を襲う。犬の独特の嗅覚で彼はその問題が発覚する前から分かっているのだが、言葉での伝達手段を持っていない彼にはどうすることも出来ない。一つの悲劇が次の悲劇へと連なり、彼の飼い主は実に気の毒で不当な立場に立たされ、殆ど全てを失いかける。しかし、彼はこの状況、人生のどしゃぶり期をレースと同じように冷静に忍耐強く乗り切る。

その間、この犬は実に深い愛情と優しさ、深さで彼を見守り、支え、飼い主が自暴自棄になりかけた時には、犬に出来るあらゆる手段(その中には、おしっこを引っ掛けるというのもあるのがユーモラス)を講じて、文字通り飼い主を破滅から救い出す。やがて八方塞りの状況から飼い主がやっと抜け出せ、幸せになれるときに飼い主の腕の中で寿命を迎える。しかし、その後も、、、という話。

犬は話せないだけで人間の悲しみも喜びも全て分かっている、犬の深い優しさ、考え深さ、洞察力、、、犬を家族の一員として持った人には共感できるところが大きいだろう、そんなものが全編を漂う。犬好きには涙なしでは読めない小説。英語を苦にしない犬好きの方には必読の本だった。日本語でまだ翻訳されていないのなら、一日も早くそうなって欲しい。
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by bs2005 | 2010-09-14 09:42 | 忙中閑の果実  

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