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For he is a jolly good fellow.

今朝未明に悲しい知らせをメールの中に見つけた。先週の金曜日の早朝に、大好きな友人が亡くなっていた。

とても親しくさせてもらっていた友人J。思い出はあり過ぎる位。私よりずっと年上で、引退したお医者さんだから、分からないアメリカの生活上のことから、健康上のこと、困ったときには何でも相談していた。私のジョークの切り返しが面白いからとよくいろいろなことに誘ってくれた。冗談の大好きな、いつも笑っているような人だった。

亡くなってみて皆が「いつも朗らかで楽しく、嫌なことを言ったり、したりすることの一切無い優しい人だった」と口を揃えて言う。本当に優しく楽しい人だった。怒りっぽい私を笑っていさめてくれたり、本音で付き合えた友人だった。

とても親しくさせてもらっていたのに、J.が肝臓移植を待っていたこと、亡くなる前は肝臓癌を患っていたことを全く知らなかった。人一倍元気でタフな人だったので、年齢的には80歳近いけれど、あと十年、二十年は軽く行けるだろうと思い込んでいた。回りの友人も殆ど癌のことは知らなかった。

5月、娘の出産の為に日本に戻る前日にたまたま電話をくれた。7月、戻った頃、出産は無事だったかと電話をくれた。J.は産婦人科医だったので、破水した娘に不安を抱えて飛び立つ私を安心させてくれた。二回ともいつもと変わらぬ朗らかで冗談好きなJ. だった。

肝臓癌で亡くなったことを知ったときは、何で教えてくれなかったのか、何で言ってくれなかったのかと思った。水くさいじゃないかと。5月にはもう分かっていた筈だ。7月には別れのつもりでかけてきたのかもしれない。でも、そんなことはおくびにも出さなかった。だから私も何も気づかず、いつもと同じように冗談を言って「又ね」と軽い気持ちで電話を切った。

訃報を聞いたときは、だから、そのことがとても辛かった。言ってくれたら、すぐにでも会いに行ったのに。もう一度会いたかったのに、、、と。

でも今思うのは、いつも朗らかで冗談ばかり言っていたJ, 弱った自分を見せたくなかったのかもしれない。私に心配をかけたくなかったのかもしれない。いつも楽しい自分を見せていたかったのかもしれない。私にかけてきたのも、そんな病気を忘れたかったのかもしれない。

For he is a jolly good fellow. (だって彼は陽気な善いやつなんだもの)

キング牧師と変わらない年代の黒人として生まれ、黒人のハンディを背負いながら医者になったJ.。同年代の中では珍しい存在だったろう。それだけ、ものすごい努力と苦労をしてきたのだろうけれど、一度も差別に関する苦い言葉を聞いたことが無い。いつもお茶目な笑顔を絶やさない人だった。白人にも沢山友人が居た。

ただ一つだけおかしそうに笑って話してくれた差別の話。昔、何もかも黒人と白人が違う施設を使わされていた頃、友人達とドライブしていた時、間違ってガソリンスタンドの白人用のポンプを使ってしまった。オーナーは飛び出して来て、今取ったガソリンを戻せという。謝ってお金は払うのだからと言っても、元に戻せと怒っている。入れてしまったものを今更と困っていたら、そのオーナーはホースを持ち出して、自分の口で吸い出して戻したのだそうだ。J. はお茶目な目で「あの人、身体壊して長生きできなかったと思うよ」と笑っていた。

辛い話や暗い話はしない人だった。いつも私をからかってきて、私もそれに切り返すのが忙しくて、そんなJ.を尊敬している、なんてひとことも言ったことがなかった。私の方も、J. をおちょくるようなことばかり言っていた。面と向かって褒めたり、感謝の言葉を改めて言った記憶が無い。

そうして何も知らず突然訪れた別れ。J.は既にもうお骨になっているという。今日、カリフォルニアらしい広くて大きく抜けるように明るい空を見て、「もうこの空の下のどこにもJ. はいないのだ」と痛切に思った。たまらなく淋しかった。

何で言ってくれなかったのという思いは消えないけれど、J. は初めて会った15年近く前から最後まで、いつもjolly good fellowだった。何も教えてくれなかったのも、きっとそれがJ.のスタイルだったのだろうと自分を慰めている。

さようなら、J. いつも有難う。あなたのことは忘れないよ。沢山の楽しい思い出、有難う。さようなら、jolly good fellow、J. とってもとっても淋しいよ。

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<American version>

For he's a jolly good fellow, for he's a jolly good fellow
For he's a jolly good fellow , which nobody can deny
Which nobody can deny, which nobody can deny
For he's a jolly good fellow, for he's a jolly good fellow
For he's a jolly good fellow , which nobody can deny!

この歌は引退、昇進、誕生日などを祝うときの歌だそうで、祝福の歌だそうです。亡くなったときには不似合いの歌かもしれませんが、jolly good fellow というのは正にJ.そのもので、J.の人生をJ.らしく全うしたことを祝福したいです。

jolly: 陽気な、明るい、素敵な
jolly fellow: 愉快な男、面白い男

by bs2005 | 2010-08-24 17:21 |  

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