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岡部伊都子さんの言葉

NHKこだわり人物伝 12月 は岡部伊都子さんを取り上げています。

彼女の著作の中でたった一冊だけ読み、とても大事にしていた本があります。仏像の写真とエッセイが一つになった本でした。中学の頃、それまで仏像にも特に興味がなかったのに、本屋で見かけて、とても惹かれるものを感じて手に入れ、とても気に入っていた本です。この本しか岡部さんのものは読んでいないような気がするのですが、その文と仏像が伝える凛とした美しさ、瑞々しさは今でも深く心に刻まれています。

それなのに他の本は読んでいないのは、私には他の本は難解すぎたからだったような気がしますが、それも深く覚えていない始末です。今回、このシリーズで彼女をもっと深く知ることが出来そうで楽しみにしています。

第一回は「私は加害の女」というタイトルです。婚約者が「天皇の為に死にたくない」と言ったとき、「何でそんなことを言うのか。自分なら喜んでお国の為に死ぬ」と言ったことに戦後、自責の思いで一生向きあいます。それが自分は戦争の被害者ではない、戦争に追い立てた加害者であるという意識になります。佐高信さんは、岡部さんのことを、日本人では珍しく自分の加害者性を自覚できた少数者だろうと言っておられます。

岡部さんは、日本人の加害者意識の無さにも批判的で、「花や寺など、日常に宿る美しさをみずみずしい感性でつづる一方、戦争や差別などさまざまな社会問題に対し鋭い批判を繰り広げて」行かれたそうです。

その岡部伊都子さんの言葉。

闘わない幸福というのは考えられない。特に自分自身と闘わない幸福は。

何だか久しぶりに凛とした美しく力強い言葉を聞いた思いがしたと同時に、私が多分唯一購読して読んだあの本の全編に漂っていた美しさが、本物のものだったのだと改めて感じました。

by bs2005 | 2009-12-17 02:39 | 忙中閑の果実  

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